介護
介護の仕事が体力的にきついとき、続けるためにできること

体力的にきついと感じているなら、まず確認してほしいのは「がんばりが足りない」わけではない、ということです。腰痛や夜勤の負担は、本人の根性ではなく、身体の使い方・道具・人員配置・働く場所で大きく変わります。今の職場で減らせる部分と、職場を変えないと減らせない部分を分けて考えると、次にやることが見えてきます。
体力的にきついのは、あなたのせいではない
介護の仕事で腰痛が多いのは、構造的な問題です。厚生労働省は2013年に「職場における腰痛予防対策指針」を改訂し、人力での抱え上げは原則行わせず、リフトなどの福祉用具を活用する方針を明示しました。それでも普及は追いついていません。令和4年度の介護労働実態調査では、介護用リフトを導入している事業所は全体の4.9%にとどまっています。
つまり、多くの現場が「人の手で持ち上げる」前提のまま回っているということです。あなたが膝や腰を痛めているなら、それは個人の限界というより、職場の設備や人数が追いついていないサインかもしれません。
きついと感じる理由を分けてみると、だいたい次のどれかに当てはまります。
- 移乗や入浴介助での腰への負担
- 夜勤明けの疲れが抜けない、生活リズムが崩れる
- 人手不足で一人あたりの担当が多く、休む隙がない
原因が違えば、効く対処も違います。
今の職場のまま、減らせる負担
すぐに辞めなくても、減らせる負担はあります。まず身体の使い方です。
ボディメカニクスは、てこの原理や重心移動を使って、最小限の力で身体を支える技術です。膝を曲げて腰を落とす、利用者の身体を小さくまとめてから動かす、足を肩幅に開いて支持面を広げる。こうした基本だけでも、腰への負担は変わります。研修を受けたことがなければ、職場で開催されていないか聞いてみる価値はあります。
次に福祉用具です。スライディングボードやスライディングシート、移乗用リフトは、抱え上げそのものをなくすための道具です。導入している施設はまだ少数ですが、あるのに使われていないケースもあります。「使い方がわからないから手で持ち上げている」状態なら、もったいない話です。
そして相談。夜勤の回数がつらさの中心なら、月の回数を減らせないか、シフトの組み方を変えられないか、上司に持ちかけるだけで状況が動くことがあります。腰を痛めているなら、無理に隠さず伝えたほうがいい。我慢して悪化させると、戻すのに時間がかかります。
ここまでやっても変わらない、相談しても取り合ってもらえない。そういうときは、職場そのものを見直す段階です。
負担の少ない働き方・職場を知っておく
同じ介護でも、働く場所によって身体への負担はかなり違います。
たとえばデイサービス(通所介護)は、自宅から通える程度に自立度の高い利用者が中心です。寝たきりの方を一人で移乗するような場面は、入所施設に比べて少なくなります。日中の営業が基本なので、夜勤がない事業所も多い。生活リズムを整えたい人には合いやすい働き方です。
訪問介護は、利用者の自宅を一軒ずつ回ります。身体介護も生活援助もありますが、一度に一人と向き合うため、施設のように複数人を同時にさばく忙しさとは質が違います。移動時間が挟まる分、自分のペースもつくりやすい。
夜勤の負担が大きいなら、日勤のみで働ける職場という軸で探すのも手です。デイサービスのほか、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅でも、日勤専従の募集があります。夜勤手当がなくなる分、月収は下がりやすいので、そこは納得して選びたいところ。
施設形態と負担の傾向を、ざっくり整理しておきます。
| 働く場所 | 身体的負担の傾向 | 夜勤 |
|---|---|---|
| 特養・老健などの入所施設 | 移乗・入浴介助が多く重め | あり |
| デイサービス | 自立度が高めで比較的軽い | なしが多い |
| 訪問介護 | 一対一でペースを取りやすい | 基本なし |
あくまで傾向です。同じデイサービスでも利用者層や人員によって体感は変わるので、見学や面談で実際の介助内容を確かめてください。
施設ごとの違いをもう少し知りたいときは、未経験から介護に入る前に知っておきたいこともあわせて読んでみてください。
転職を考えるなら、何を確かめるか
「体力的にきついから辞める」は、逃げではありません。働き続けられる場所に移ることは、キャリアを守る選択です。
ただ、勢いで決めると同じ悩みを繰り返しやすい。次の職場を見るときは、いくつか確かめておきたい点があります。
福祉用具がそろっているか。リフトやスライディングシートが置いてあって、しかも実際に使われているか。配置人数に余裕があるか。一人あたりの担当が多すぎると、結局どこでも消耗します。夜勤の回数や日勤専従の可否。腰や身体の不安を、面談で正直に伝えても受け止めてくれる雰囲気か。
こうした内情は、求人票だけではわかりません。介護に特化した転職エージェントなら、施設の人員体制や離職率、職場の雰囲気まで踏み込んで教えてくれることがあります。自分一人で何件も見学する負担を考えれば、間に入ってもらう価値はあるでしょう。
サービスごとに求人の傾向や得意分野は違います。介護転職サービスの比較で、自分の希望に近いところから当たってみてください。
無理をする前に、選択肢を持っておく
体力的にきついという感覚は、放っておくと「自分には介護は向いていない」という結論にすり替わりがちです。でも、向き不向きの前に、環境の問題であることがほとんどです。
身体の使い方を見直す。道具を使う。相談する。それでも変わらないなら、負担の少ない職場へ移る。順番に試せる手は残っています。今すぐ全部やる必要はありません。まずは「今のきつさは何が原因か」を一つ書き出すところから始めれば十分です。