保育士
保育士の給料・処遇改善のリアル|上げる方法も

保育士の給料は「安い」と語られがちですが、ここ数年で水準は着実に動いています。国の統計では、2024年度の保育士の平均は月額27.7万円、年間賞与など74.2万円を加えた年収で約406万円でした(賃金構造基本統計調査をもとにしたWEL-KIDS PRESSの算出、出典は厚生労働省令和6年賃金構造基本統計調査)。前年の約397万円から上がっており、過去5年で年収はおよそ32万円増えた計算になります。
ただ、この「平均」はあくまで全体をならした数字です。実際の手取りは、公立か私立か、園のある地域、勤続年数、そして処遇改善の手当が現場まで届いているかで大きく変わります。順に見ていきます。
平均年収はいくらか、ただし幅は大きい
まず押さえておきたいのは、平均が約406万円でも、20代と50代、地方と都市部では当然差が出るという点です。
経験の浅い1〜2年目では月給ベースで20万円前後からというケースも珍しくありません。一方、勤続を重ねて主任クラスになれば、年収が平均を大きく上回ることもあります。「保育士の給料」とひとくくりにせず、自分の経験年数・役職・地域に当てはめて考えるのが現実的でしょう。
賞与の存在も見逃せません。月給だけを見て低いと感じても、年2回の賞与を含めると印象が変わる園もあります。求人票で月給を比べるときは、賞与の月数まで確認しておきたいところです。
公立と私立、地域でどう違うのか
公立保育園の保育士は、地方公務員の給与体系で働きます。初任給は大卒で18万円台と、私立と比べて飛び抜けて高いわけではありません。違いが出るのはその先です。
公立は勤続年数に応じて昇給する仕組みが整っており、退職金や年金も公務員の制度に準じます。長く勤めるほど差が開き、生涯年収で見ると公立のほうが多くなりやすい、と整理されています(保育士ワーカーの解説)。一方の私立は、運営法人によって待遇の差が大きく、退職金制度がない園もあれば、独自手当を厚く出す園もある。法人次第、というのが実情です。

地域差を生む仕組みが「公定価格」です。国が園に支払う運営費の単価は、公務員の地域手当に準じて市区町村ごとに区分されており、20%・16%・15%・12%・10%・6%・3%・その他地域の8段階があります(こども家庭庁の資料)。区分の数字が大きい東京23区などの都市部ほど単価が高く、給与の原資も厚くなります。地方から都市部へ移るだけで、同じ経験年数でも提示額が変わる場合があるわけです。
処遇改善の手当はどういう仕組みか
「処遇改善」という言葉はよく聞くものの、中身は意外と知られていません。これは国が保育士の賃上げのために園へ加算する補助の仕組みです。
令和6年度までは、目的の異なる3つの加算が並んでいました。加算Ⅰは全職員を対象に経験年数やキャリアパス整備に応じて加算するもの、加算Ⅱは中堅やリーダー層に月額最大4万円を上乗せするもの、加算Ⅲは全職員に月額9千円を上乗せするものです(こども家庭庁の分科会資料)。
この3つが令和7年度から一本化され、基礎分・賃金改善分・質の向上分という区分に整理されました(コドモンの解説)。狙いは、別々だった申請や実績報告をまとめて園の事務負担を減らすこと。働く側にとって重要なのは、こうした加算が制度として用意されていても、実際に自分の給与へどう反映されるかは園の運用次第だという点です。加算分を基本給に乗せる園もあれば、手当として配分する園もある。求人検討時や面接で「処遇改善はどう支給されていますか」と確認しておくと、入ってからのズレを防げます。
収入を上げる現実的な方法
給料を上げたいとき、打てる手はいくつかあります。すべてを一度にやる必要はなく、自分の状況に近いものから検討してみてください。
- 役職を上げる: 主任・園長への昇進は、上げ幅が最も大きい王道です。加算Ⅱのリーダー手当も役職や研修修了が前提のことが多く、キャリアパスに乗ることが収入に直結します。
- 資格・研修を積む: 専門分野別研修などを修了すると、副主任・専門リーダーといった処遇改善の対象になりやすくなります。
- 施設を選び直す: 同じ保育士でも、賞与の月数や手当の設計は法人で大きく違います。今の園で頭打ちなら、待遇の良い園への転職が一番手早いこともある。
- 地域を変える: 公定価格の区分が高い都市部の園は、原資が厚いぶん提示額も上がりやすい傾向があります。
このうち「施設を選び直す」は効果が見えやすい反面、園ごとの実際の待遇は求人票だけでは読み取りにくいのが難点です。賞与の実績や処遇改善の配分方法といった踏み込んだ情報は、園と交渉してくれる転職エージェントを通したほうが集めやすいことがあります。各社の特徴は保育士の転職エージェント比較にまとめています。
次の一歩
まずは、自分の年収が経験年数・地域の相場に対してどの位置にあるかを把握するところから始めるとよいでしょう。平均約406万円という数字を起点に、公立か私立か、地域区分はどうか、処遇改善が給与に乗っているかを一つずつ確認していく。
そのうえで、今すぐ年収を動かしたいなら施設を選び直す、腰を据えて積み上げたいなら役職や研修でキャリアパスに乗る、と方針を分けて考えられます。いきなり正社員での転職に踏み切る前に、責任を抑えて働き方を確かめたい人は派遣保育士という働き方も選択肢に入ります。給料は園と地域と制度の掛け算で決まります。動かせる変数を一つずつ見ていけば、上げる余地は意外と残っているはずです。